ピザ屋との文通

 拝啓   帰宅すると、わたしは胸が痛くなります。新聞受けの奥に刺さった、クシャクシャの貴方方のチラシを見ると。ここまで、わたしが熱烈なオファーを頂いているのに、それに応えない、ピザに冷ややかな人と思っておられませんか?わたしは新聞は取ってませんので、完全なるピザチラシ受けです。朝ピザ、夜ピザ、カモンカモンです。思えば私は常にピザを欲して、生きてきました。幼少期、パーカーのフードを裏っかえしにすると彼女募集中というのが流行りました。ご存知でないですか、ね?私はよく友人にふざけてフードを裏向きにされましたが、それを私は極端に嫌いました。別に、私は彼女を公に募集するのが恥ずかしかったのではなく、そもそも、女というものにその頃微塵の興味も芽生えてなかった頃です。結論から申し上げますと、一つの可能性、そう。わたしのフードにピザを誰かが入れてくれる可能性が亡くなると、当時の私は考えていました。それは冗談ですが、私はマンション住みなので、五階までエレベータに乗るのですが、時折、ほんの稀にです、ピザ屋のお兄さんと鉢合わせることがあるんです。あの香り、食欲を一気に覚醒させるあの香りが、あの空間を一瞬で支配するんです。私の背後には、ピザを持ったお兄さん。あぁその、片手にちょんと行儀よく乗った貴方のそれを、私のフードに

とりあえず、もう、気が済んだので、わたしは寝ます。

 

山本

 

西陽

 西陽、それはブラインドの上に薄っすら積もる埃を、いつもよりも、少し、際立たせてくれるようです。この時間に家にいることはあまりありませんが、昨晩帰宅しなかったのもあって、洗濯と風呂のために帰りました。

部屋のホワイトボードに西陽がスポットライトのようにちょうど当たってか、わたしは何と無く、無感情で見つめておりました。5/30と、大きな字で力強く、書き殴ってあるのに気付きました。それと横に小さく、丁寧に、家賃27日と添えてありました。

さっきより日が沈んで暗くなると、ホワイトボードにいた西陽も何処かに消えていきました。5/30という文字はもう、今にも動きそうな予感を、わたしに与えることはありません

the great of 金曜日

晴天のお昼時、わたしの今日は、セブンのレジに並ぶOLの何気ない一言によって始まった

 

「今日のお弁当まっ茶色なんだよなー」

 

この瞬間は、突然訪れた。一切の予告もなしに。わたしは雷でも撃たれたように、手に持っていた伊右衛門をぐっと、強く握った。それから会計を済ませて、東口のバスターミナルに向かった。

 

そして、昼間の夜行バスに乗り込む。それは高速バスが今までわたしにとっては「夜中に走行する」というのが常であったから、この表現が何かとしっくり来てしまう。

 

乗り込んでからは、先程セブンで入手した、じゃがりこを食べる。夜行バスでじゃがりこを食べるのは熟練の技術が必要で、噛むことは決して、許されない。舌の上で転がしながら軟化させて飲み込む。この方法しかない。しかし昼間の夜行バスの場合はこの心配はなさそうである。胸を張って、堂々と、じゃがりこを頬張ろうではないか

 

 

レッドカード

最近頻繁に天気が気になります。最近、というのは此方仙台での交通手段が、殆ど自転車であるためです。

 

天気予報を見ると、ああ、明日は雨なんだな。と。

 

雨、なんですよ

 

一昨日くらいに、東京にいる彼女に手紙を一つ書いたんです。

 

元気にしておりますか?的なやつです

 

「東京にいる彼女にお手紙を書く」

 

響きがいい。きっと東京も雨だろうな、と。

 

先程、雨の帰り、無灯火で自転車を運転していたのでレッドカードと言うのを頂きました。警察の方がレッドカード、貰ったことありますか?と聞くので、私はありませんと。更に、

 

レッドカードはいっぱつたいじょうじゃないんですか?

 

と尋ねると、笑っていました。

 

 

夢をみたくない

こんばんは山本です

 

全然どうでもいい話をしますが、コンプレックスという言葉をよく我々は日常で使います。私も以前、コンプレックスを被っておりましたので、この言葉にはよくお世話になったものです

 

ところで、言語連想?というものがあります。例えば、火→水とか光→速いとかなんでもいいです。わたしなんかは、流るる川を観るとちんこが疼くんです、丁寧に説明を加えると、それは川を皮と、まず無意識に結び付けて、そこから剥けないに着地するのでしょう。もっと言うと、私がボロボロ細い釣竿を道端で拾ったら、渓流の川を連想し、云々、それが包皮に達するというのは、少々やりすぎ、といったところですが

 

要するに、コンプレックスは関連要素の集合ネットワークできていて、それの一端に少しでも触れてしまうと…核心部の事実までフローチャートの最短距離を通って、向かっていくわけです。

 

それで、私の最近みる夢、全く上の通りに進行します。それが少し、言いたかっただけです。そこら辺をふわふわ浮かぶシャボン玉に触って、パンッと割れたあの瞬間、あれが積極的に、永遠と続くのが夢なんです…

 

 

A子さんへ

技術補佐員のA子さん、この度はわたしのとった行動を何とお詫びをすれば良いのか、正直なところ分からずにおります。ただ、一つだけ、お分り頂きたいのは、僕には全くの、1ミリもの悪気すらなかったということ。たまたま研究室の隣のA子さんの部屋のあの大きな冷蔵庫に、昼に使うキャベツとベーコンを取りに来た、たったそれだけなんです。

A子さんは独り身だという事を、この間の飲み会でわたしは誰かから聞きました。毎日、夜遅くまで、実験室で白衣を纏い、試験管を振るう姿を見ていますと、男の入り込む余地など寸分もないことも、容易に頷けます。

でも、わたしはある意味、諦めているのかとさえ思っていました。あの寡黙で真面目な研究に対する姿勢。そうです、だからこそ昨日の昼の事件に対して、わたしの中にも暗く重い罪悪感として、居座っているとさえ思われるのです。

A子さんの部屋に入った途端、何故かその時はパソコンに目が行きました。そうですね、あの時は廊下からドアを開けて入ったのではなく、研究室中からA子さんの部屋に入ったので、今思えば廊下側からノックをして入室するべきでした。ディプレイに眩く光る、ウェデングドレスの数々、右手にマウスを掴み、左手で頬杖をつきながら…食い入るようにではなく、何気無くポカンとしながら、目の保養という具合で…

その時です。後ろのわたしの気配を感じなさったのか、わたしもその時すぐに部屋を後にしていればと、今でも後悔しますが…兎に角、急いで、慌ててマウスを動かして、タブを閉じる仕草は、わたしの胸の奥底に苦く残り続けて…

兎に角、わたしは早急に、忘れなければなりません。A子さんの為に、そしてわたしの罪悪感が再び、息を吹き返さない為にも

 

 

 

ふりーだむ

こんばんは、今日は研究室の教授と助教が出張ということもあってか、皆少し羽を伸ばしておりました…記憶では、5時半位には皆で研究室を出て、呑み屋で楽しくやってました

 

羽を伸ばす。それはまさに自由を手にしたようでした。しかも、私一人だけの自由!では無くて、それを周りの人間と共有できる素晴らしさといったら…

 

これはわたしの土日問題に少し良い刺激を与えてくれました。苦痛も不安も、歓喜も、それら全てを差し出してくれるのは、結局は人間社会なのだと、感じた次第です

 

 

食パン

今日の格言です

 

「食パンはそのままで食べると、美味い」

 

家に着くと、腹が減った。何かないかと冷蔵庫をチェックするも、賞味期限すれすれのキムチがちょこんと、座っている

そこで私はテーブルに乗る、手を付けられてない食パンに目を向けた。これは半額で売られてた奴でトンデモナク安かったので先日購入したものだった。でも

 

焼くのは面倒だ

 

そのまま食おう

 

わたしも驚きました。これまで二十年くらい生きて参りましたが、食パンはトースターで焼かねばならない物、という先入観がございました。そうなんです。こんがりと焼きあがった表面に素早く、薄く、マーガリンを拡げて食べる。

 

僕は家の慣例に従って、半ば、渋々、トーストを口に運んでおりました。トーストさんには今更になって大変申し訳ないですが、貴方を美味しいと思って食したことはありませんでした…それより、朝はご飯に納豆党、に属しておりましたので

 

ふわふわモチモチ食感の彼を、是非堪能してみて下さいな

 

 

 

 

もう、参りました…

1.コンビニ

 

メビウスの6mgを一つで

「えーそれにつきましてはですね、時期が参りましたら、改めてお話させていただきます…

「は?ないの?

「えー…申し訳ありませが…それにつきましてでもですね、時期が参りましたら、お話させていただきます……

 

2.二郎系

 

「にんにくは?

「えー、それにつきましてはですね、時期が参りましたらお話させていただきます…

「野菜は?脂は?

「えー、本当に申し訳ございませんが…それにつきましてもですね、時期が参りましたら、改めて、お話させていただければ、と思います…

 

3.スーパー

 

「袋お付け致しましょうか?

「えーそれにつきましてはですね、時期が参りましたらお話させていただければ、と思います…

 

4.セブンイレブン

 

「オールドファッションください

「普通のオールドファッションとチョコオールドファッションがあるですが、普通のオールドファッションでよろしいですか?

「えーそれにつきましてはですね、時期が参りましたら、改めてお話させていただければと思います…

 

5.ファミリーまーと

 

「成人であれば此方のパネル押して下さい

「えーそれにつきましてはですね、時期が参りましたら、改めてお話させていただきます

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

毎回こんな感じの夢をみます

わたしはよく、夢をみます。夢の内容は毎回ほとんど変わりません。びっくりするくらいです。出て来る人間も、いつも小中学時代のサッカー部の彼一人、同じです。先程、昼寝した際に見たことを思い出しながら、書いてみようかと思います

 

 

わたしがいるのは、土埃が舞うグランド、そうです、大抵グランドにいます。暑さとか寒さとかの感覚はわかりませんので、季節も判然とはしていません。

わたしは列に並んでいます。大きなサッカーゴールの正面です。コーナーからふわり、ふわりとしたボールが飛んできて、皆それに上手に合わせてシュートします。さて、わたしの番が巡ってきました。その時のわたしは少なくからずの緊張感、それを持っていたと思います。というのも、列の後ろに並んでいる一人の人間、特定の彼を意識してのことだったと、今、中学時代の私を思い起こすと、中々、合点がいくものです

コーナーから、ボールが私の方に飛んで来ました。わたしはすかさずに落下位置を予測してそこに向かって駆け出します。しかし、全く、間に合いません。低い弾道を描いたその白い球体は手前の、浅めの位置に落下してから、私の頭上を遥かに、高く、上空へと昇っていきます。それから、また何かを思い出したかのように、重力に引かれて地面へ戻って来るではありませんか。わたしは、コーナーにいるキッカーに背をむけて、それを追いかけるしかありゃしません。

私はボールを回収して、また列の後ろに戻ろうとします。列の中央付近に、彼の親しき友人とおしゃべりしながら並ぶ例の彼の姿がありました。私は今の失態に関して、今すぐにでも彼を前に弁解したくて、仕方がありませんでした。でも、実際におかしいでから、球があんなにも不自然に跳ねることなんて考えられません。列に並ぶ部員達も日常のおしゃべりを続けて、摩訶不思議な球体の不規則な運動、そんなものは彼らの眼には止まらなかったのでしょうか?

再び、列に並ぶと珈琲の香りがして来ます。珈琲、この香りがわたしを落ち着けて、先ほどの彼に対する弁解の念の灯りを、ゆっくりと消してくれたようです。

それから、彼の番が回って来ます。その、大きくしなやかな右脚の振りから放たれる弾は、綺麗な線形を描きながら…

 

上から床が軋む音が、話し声が聞こえてきます。ひっくり返った珈琲カップが床に転がっています。どうやら、夢を観ていたようです。わたしは