信仰

腎臓をお揉みなさい、されど貴方は・・・

 

 

私は、半狂乱になって腰骨の上あたりを力いっぱい親指の腹で押した

 

そこには、指からは堅く繊細でキメの細かい筋肉繊維、そして表面の柔らかな脂肪を感じ取ることができた

 

 

「すみません・・こんな小さな物理的刺激が効くのですか。そもそも、彼に届いているのでしょうか?

 

名医は落ち着いたしゃべり口調で、

 

「勿論、効果はあります。脂肪という外壁にノックし続けるのです、内側の住民である彼にもノックの音は確かに、確実に聞こえるのです。とにかく、たたき続けること。いつか彼がそれに渋々ですが、応じる時が来ますから・・そうすれば、血液も何から何まですべてが改善されて貴方は健康体になり、疲れの蓄積されにくい身体になるでしょう」

 

 

私は家に帰るや早速、腎臓を揉み始めた。といっても、腎臓を揉んでるという感覚は皆無であったが、不思議とそんなことはどうでもいいことに思えたのだった。私が、その時感じていたのは、純粋な幸福感、この確固たる事実が私をほとんど支配し、最も重要な目的さえも鈍らせ、脆弱なものへと変化させてしまった

 

私は寝る前にも名医と会話をし、真新しい帯を付けたこの分厚い名医を、枕もとにそっと置き、何とも言えぬ新鮮な充実感を抱きながら、明日を迎えるのだった・・・