ぐるぐるー@

私は電車を待った


湿っぽい空気感、ホームの屋根の間から見て取れる、その力の抜けた、脱力しきった腑抜けた空。ちょうどそこから雨が少し、滴り落ちてきたところだった。その中から、ほんのりと春の熱を私は感じ取れた


私はコートを脱ぎ、地面に置いたバックの上に
一旦退避させて、それから薄手のセーターを脱いだ。


私は思い切って、自分の思考や感覚を少しだけ前に、前へと前進させた。新緑の季節、騒がしい蟬の声や、あの鬱陶しい陽気を思い浮かべようと、そう試みた


ただ、その試みは中々成就しなかった。当たり前のように何度となく経験した夏という季節、それが単語として、不連続な言葉として断片的に出てくるが、それは平素でつまらなく、夏という一つの物語を紡ぐにはやはり物足りなさを感じた


でも、私はそれでいいと思った。現在の季節に埋没することが、逆側にいるそれを忘れさせてしまうというこの感覚は…かえって、そこに訪れた時の感動や新鮮味を感じさせる、そんな気がした


季節という枠組みを越えて、私たちの身の回りは常に循環している。円を描きながら、一回転するとまた少し前進し-螺旋をなぞるように…少なくとも、循環というものがもたらすものと、この少しばかりの前進が相まって、新しさを私に与え、生きる上での活力の一部となっているように感じた