また一人と店内に入っていく。入り口の自動ドアが開くたびに、外の冷たい空気が私の足下をさらっていった


狭い店中には、くたびれたジャンパーを羽織り、背筋を丸くしながら浅く腰を掛け、ぶっきらぼうに新聞を広げるおっちゃん。整ったスーツに身を通し、左手で機械的に、或る一定のリズムでマフィンを口に運びつつ、手元の画から世界を覗きみる若者と…


私は、また例の外気を、その冷たさを、足のくるぶしのやや露出したところに見出すことができた。それから、わたしは思った


ああまた、客が一人入ってきたな


ドアの付近を見ると、確かに、この狭苦しい店内に客がひとり入ってきた。彼は私の隣の、二つ椅子の丸テーブルに荷物を置き、何かを注文しにいった


わたしは、店内を改めてゆっくりと見回した。くたびれたジャンパーのおっちゃんは、相変わらずスポーツ紙のある一面に目を通していた。


しばらくして、黒いプラスチックのお盆に珈琲とマフィンを乗せた若い彼が、私の隣に戻ってきて静かに腰を降ろした


彼はコートのポケットからスマートフォンを取り出すと、イヤホンを捻じ込み、耳に掛けた。それから、スマートフォンを器用に右手で操りながら、反対の手で確実にマフィンを口に運び、時々珈琲を啜った


ああまた、1日が始まるのかと


私はそう思った