おめざめ

洗濯機の電源ボタンが押された音、それをわたしは聴いた。あの遠くの生活音は、洗面所から廊下を伝ってわたしの部屋に届いたのだろう


それは、私自身に意識が戻りつつあることを、教えてくれた。ある深い水の中から、筋状の光が散乱する方向、その出所に向かって漠然と、無欲に、ゆっくりと浮上していく。


浮力に身を委ねて、昇りゆく過程で、わたしは確かに意識というものを、少しずつであるが獲得していったのを実感した。その意識を持ってして


リビングのドアに手を掛けたときの、ドアの隙間から溢れでる灯油の臭気と、早くも纏わりつくような温度が、わたしに覚醒を悟らせた