おながわ

いつ、雲間から光が射し込むのだろうか?そんなこんな、わたしは石巻を経由して、女川町まで来ていた。その女川、駅舎を出ると海に向かって真っ直ぐと続く、几帳面に煉瓦が埋め込まれた幅広の道、その両脇には黒い瓦の屋根に統一された八百屋から、郵便局、小洒落たバーまでがずらり、並んでる。

 

この煉瓦作りの真新しさを感じさせる道をお散歩していると、魚市場の中からわたしの半分の背丈もないくらいの、頭が身体に対してややアンバランスさをまだもつ少年がきゃっきゃ笑いながら、飛ぶような勢いで道に出て来た。煉瓦に立つ彼のその眼に、わたしは明らかに吸い込まれ、前から強く吹く新鮮な潮の香りを含む風と相まってか、まるで彼自身が、この街の象徴のように…真新しいこの建物や道、電柱、道路総てを代表しているかの様に感じられなくもなかった

 

そうこう散策をしていると、雨がパラパラ疎らであったが、雨宿りという意味も込めて、近くの駅舎の二階にある銭湯に行こうということになった。わたしは銭湯で烏の行水を終えるや、更衣室の出て直ぐにある二十畳くらのたたみのスペースに来ていた。その空間は地元の人間が集う場所になっており、海やわたしが乗って来た仙石線の線路が続く山の方の景色を望むことができた。しかし、誰も外の景色などみる者はおらず、持参したお握りだか、惣菜だかを窓際にある電子レンジまで熱心に運んだり、生ビールを豪快に飲むもの、またある者は、テレビの横ある座布団を大雑把に二、三枚引き抜いて、楽天の試合だかを観ながら、それを敷いて昼寝をしたりしていた。

 

わたしも気がつくと17時で…というのも完全に彼らの空気感に浸っていた。自分の背丈分の座布団、それはそれは、旅の午後に相応しいひと時ではないだろうか!!