私は店内をぐるりと、見回した。整然と並ぶ机や椅子に、人の姿はまったく、一人も見られなかった。お昼時のこの時間、そう、時刻はちょうど13時であるのに
時間を持て余す大学生も、社員証をぶら下げたまま昼食を取りに来る人間もおらず、一切の無音がその場を作った
わたしは、ちょうど二階の窓際にいたから外の青葉通りの様子が良くわかった。信号をサンモールの大きな屋根の下で待つ多くの人達、彼らは何処に行くのやら
何ということか、わたしの目の前のお盆に小さく、ちょんと乗るそれらが、私一人の為に腕によりをかけて作られた、逸品のような印象を受けた。わたしはゆっくりと、それを召し上がることにしよう。
私は、いつものように、じゃがいもの前菜から口にする。少々、今日の前菜は塩味の主張が強いかな?すかさず、冷えたアイスティーで口の中の塩分濃度を調整する
前菜で、少し胃の中を刺激して食欲が最高潮になったところに、ちょうどお盆の中央に鎮座する彼の出番となる。
わたしは、丁寧、丁寧に、彼が身に纏う包みから彼を解放して、その鎧たるやを綺麗に畳んでお盆の端に置いた。それから、彼がゆっくりとわたしと一つになるのを愉しんだ
最後に片付けようと、それを持って立ち上がり、ストロー、プラスチック、それを分別して捨てようとしたところ、後ろから店員さんの声が聞こえた
そのままで結構ですよ
私は、そのまま店を出た