まよこーんぴざの命日

三月のある日。

今朝もファミリーレストランに来た。ぴたり開店と同時である。店の自動ドアをくぐると、顔馴染みの店員がにこりと会釈をして、くるりと背を向けると、忙しなく調理場の方へ消えていった。

窓際の席、朝の木漏れ日、この席に決まって、腰を下ろす。鞄を長椅子の自分の身体の横に置いて、そっと目を瞑る。それから幾らか経っただろうか?香ばしさにそそのかされて目を開けると、眼前には円形の黄金に煌めくそれが置かれている。そう、ご存知。これこそがマヨコーンピザである。彼とはもう長い付き合いで、これまでの40数年の人生で最も、長く続いている間柄かもしない。現時刻、早朝6時半。その後流るるように出社する。これが、投球前のルーティーンである。

 

それから2年後の四月、ある日。

今日は時間がない。寝坊である。言いわけがましいのは嫌いだが、年度始めはいかんせん多忙だ。会社に遅れる旨の連絡を入れた、それが呆気なく承諾された。6時50分ファミレスに着くと。あっけらかんとした女子大生の店員が口を開いた

「もう置いてありますが…さめて…」

「いや、もう時間がないから作らなくていい」

窓際の席に、腰を下ろした。プラスチックの筒に伝票が既に刺さっており、テーブルには彼が不服そうな面持ちで、鎮座していた。丁寧にピザカッターで8当分に切り分けると、

間も無く、マヨコーンピザを口に運んだ。

 

それから、三年後の四月のある日。

6時30分。入店。自動ドアを通ってマヨコーンピザを目指した。マヨコーンピザは窓際の席に既に置かれて、テーブルには既に伝票が刺さっていて、そこには¥399と刻まれている。客席を見廻すまでもなく周りには勿論、誰か居るはずもなく。

程なく、マヨコーンピザを咀嚼した。

 

それから、つぎのひ。

朝日に照った窓際。テーブルの上に彼はいた。眩しい、今日は一段と。今日はあの白髪交じりのあのおっさんに一つ、報告することがあった。改名。彼はミックスピザに改名したのであった。細木数子にそそのかされたのではなく、自らの意思で。

時計を見た。6時50分。何年か前、いつだったか、一度だけ待たせた事があった。それがいつのことやら、思い出せる訳もなく、そんな事を、考えた。