さいさいさいこ

ふと、思い出したからここに書いておきたいことがある。何が引き金になってこの事について思い出すのか、それは全くわからない。

それはわたしの最も、最も最古の記憶である。最最古。最南端の沖ノ鳥島。自我が芽生えた瞬間とはまた違うとは思うが、記憶の中の一番端っこに位置するこの嫌に鮮明な映像は、多分特別なものだと思う。ただ、同時に、今思い出したからといって、慌ててここに記す必要もないと感じる。というのも、一生あの光景をわたしは忘れないと、何たる根拠もないが、そう思う。おそらくは最期の最期に見るであろう走馬灯PowerPointの表紙の背景絵は、どうどうたるわたしのこの最古の記憶、これが描かれているに違いないと、思う。

ありゃりゃ、と。そんなこんなでまた記憶はどっかに行ってしまった。

いやはや、人差し指をゆっくりゆっくり廻しながら、徐々に葉にちょこん、と乗った赤トンボにわたしは近づいていく。今度こそ捕らえられると高を括ったわたしの油断が指先に伝わったのか、人差し指を回す速度がほんのすこし角張ったというか、箪笥の角のように滑らかでなくて不連続な体をなした。あっ、またしたても、やらかした。走馬灯までには