真面目に

この長く突き抜ける廊下には、重く、そしてたるんだ脂肪のように陰鬱な空気が足下に滞留している。廊下のほぼ中央付近に位置する共用トイレと洗面所の窓からは僅かながらの援軍、ひかりが射し込むために、辛うじて皆ここで、この4階で、生活を回すことができているのかもしれない

 

夕方、そこでのむ茜霧島は絶対的に美味い。これはかなり揺るぎのない。そういうこと。酒大して好きでもない私でも思うのだから。尚更かと

事実・洞察・行動提案・成長、これらの我の強い言葉が文字という形態を経て、やがて記号の羅列になり、さらにそれらが分解されて線になって最期にするするぬけるように解けて土に還っていく。この一連のプロセスがそこには確かにある。自分が大切にしている言葉は何であったか?朧げな意識と、鈍くボアんとした頭でオモウ。あー。と

別に悲観したり、特段、評論家を気取りたいということもないし、難しい事をこねくり回したいのでもない。

ある日の幼い私。わたしのクラスに転校生がやった。軽く皆の前で簡素な自己紹介を終えると、彼は私の隣の席に幸か不幸か、腰を下ろした。彼はそりゃ緊張しているし、慣れないこんな環境に来たのも親の理不尽な転勤のせいだし、周囲を呪っている。私には彼の家庭のことなぞ一も分からない。一も分からんから、分かったフリは良くないわけだ。でもパッパラパーな私は分からんことも分からん訳で....

そういう時の秘薬は、取り敢えず、事実を粛々と、ただ粛々と真面目に、一切の嫌味や悪意なしに、正直に受け入れる、この他にはないのである。

私には、こういう処方箋なしには、純粋さや真面目さを取り戻すことが出来ない。