F教

たっきゅうびんでーす

 

ボクは風化し年季の入ったインターホン、それを押した。パンイチの男が玄関から身を乗り出し、腕を伸ばしてドアを開けた。ご丁寧に。パンイチといえども、彼のその上半身はそれは見事なもので、腹は板チョコのようだし胸はこんもり膨らんでいて、中々のイケメンと来たから困ってしまう。この男は自らをF教の伝道者と名乗り、一配達員である僕を部屋の中ほどに導いた。奥から只ならぬ熱気を感じずにはいられぬ

 

狭いガスコンロと流しがある廊下を抜けると7.8畳の空間が広がっていた。何とも言えない男のいかがわしい臭気とが、僕の鼻を貫いたが束の間、10人いや、11人、それ以上の上裸の男達が鬼の形相をした背中に一冊の派手な銀色のハードカバーの書を乗せながら、腕立てをしている。彼曰く、銀本背負いという修行の一環らしく平気で2、3日はこの格好で過ごすと言うのだから、なるほど驚きである

 

こうくうりきがくのきそ

 

恐らく彼らの聖典なのだろうか?僕は足早に玄関に戻ってから、彼からサインを貰って密度的に恐らくは書物と思われる注文品を地べたに置いて、この奇怪なアパートの一室を後にした