じきに結婚する26歳が妄想する青春とやらを

自動販売機という機械を、皆さんはご存知のことと思う。

私も一応、存じ上げておりますこと、その事をこの場をお借りて絶賛、表明させて頂きたく思う。

私という人間は、自分の職場、工場敷地内に設置されている自販機という自販機(以後自動販売機を自販機とする)を、全ての自動販売機の位置情報を脳内で見事に天晴れつるんと掌握して、各々の自動販売機の何行何列にボスのブラックアイス!なっちゃんおれんじ!みたくピンポイントで座標を指定できるのだ。

こういう私の酒の肴にもならん一種の特技は正直なところ田んぼのかえるのゲロ程にもならんし、そもそも一般職のゆるふわ女子と自販機の話で絶頂の最中に他の男との絶対的な格見せつけるために、世間で言う所のマウンティングを画策した私はこの自販機全知全能の神である事をうっかりさえちゃんに明かしてしまうのだった。

「なら、やまもとくんさ」

「はい、いかがいたしましょうか...」

「第五工場北門寄りの自販機2行3列」

「普通のアクエリ」

我々、暇人御一行は、工場の脇を日焼け止めを腕に塗りたくりながら歩くさえちゃんを先頭に男三人がぶら下がる形となり、このクソ暑い時間帯、昼休み真っ只中の工場を突っ切って、北門に向かう羽目になった。

休憩終了時刻は13:00ジャスト。

現在時刻12:40。

実際、我々のいる建屋と第五工場と北門は対岸に位置するため普通に歩いても十分弱。往復でちょうど我々の休み時間は炉心溶解し、この炎天下、私の手に握られたガツンとみかんもつらつらみかん位には降格するのだろうと背筋がゾッとして、なぜか涼が巡ったのでよし。

例の自販機に着くと要件は一瞬にして片付いてしまった。私はにぎょうさんれつあたりをてきとうに指差した。無感動らしき声が飛んだ

「ほんとだ」

明日都心に雪が降る事を予報で知った15歳みたいな声色だった。私は胸ポケットから小銭を出して何となく、あの二行三列に、わたしの指はふらふらと向かって行った。

ことん

今日は爽健美茶が降ってきたよ