も、もしかして、ただの反抗期?(26歳)

令和元年12月3日。

寒空の通勤、自身にこんなことを問いかけた。その問い自体はありふれたものだし、今日の今朝に限った話なぞでなく年柄年中やってる遊戯である。

「わたしは組織に向いているのか?

そんな月並みの、何時もの、内向き加減をやりながら、同時にこんな返答を期待した。

「いや〜〜ヤマモトクン。君は組織たるものには一向にむかんよね

「ですよね。僕も同感です。

 

わたしは工場の外れの門からカードリーダーを通して回転戸を潜り中に入った。今という時間が朝で、これから永らく1日が始まるという感覚が一切、自分を襲ってくることはなく、かといって何ものかに期待する感情なぞ勿論芽生ず、無糖のゼリーの中にダイブする10秒前、その寸前の人間の心境はこういうもんなのかと、一切無関係な事項を脳内で流しながら、職場の席にむかった。

オフィスに入ると、おっさんたちが壁側に一列に、ぴっちり整列して音楽に合わせて腕をBUNBUN、ブン回している。ラジオ体操。始業前のオフィスは薄暗く、ブラインダーの隙間から入り込む唯一だけが、真剣なおっさんの表情を明らかにしてくれた。席に到達するや、わたしは微秒にブスッとした声でおはようございますと一言、文字どおり告げて、反応を待つことなく乱雑にバックを地べたに置き、上着をゆっくり脱いだ。わたしの席は、研修生用の席らしく、どういう訳か向かいはグループお偉い様方が連なっていて、ちょうど日本海側の平野部からアルプスを見上げる様な格好になっておった。彼等はわたしの反抗期の帰宅少女のような乱雑な挨拶など、微塵も、気にかける様子すら無く、わたしもそのお陰もあってか特段の期待をそこに折り込む必要がないのは、気楽なもんである。いや、彼等はリズミカルにBUNBUN色々ぶん回してて忙しいもんで、反抗期少女の淡く、幼い微弱な信号なぞ受け取って暇はないのかもしれない。

私の席からみて、反対側、アルプスの左端、一人のおっさんはラジオ体操に参加しなかった。このおっさんはラジオ体操には参加しないタイプの人間だった。CX。彼の名札に、役職はそう記されていた。(現場上がりな事以外不明)アルプスは右に向かう程力が強い、そういう単純明快システムなので、CX、と銘打った50過ぎのおっさんはアルプス最弱の座にいるわけだ。CXはよく悪態をつくし、愚痴を溢すや、愚痴しか溢さず、責任の重そうな仕事なんかはシューティングゲームのようにスルリ、華麗に回避した、基本、逃げ腰だ。先ほども言ったが、このCXはラジオ体操をしない。昼飯は食堂には出向かず、プリンとシュークリームを貪り、歌舞伎揚をボリボリ、凶悪な音を轟かせている人間なので、到底、健康への関心が皆無であるから、ラジオ体操なぞしたかあないのである。

だから、至極真っ当で、よって、彼はラジオ体操を行わない。

わたしは、というと席についてからは、PCを開き、妻の好きな上司のFacebookをみていた。身体を動かすことそれ自体、とても有意義だと思う人間であったが、わたしは向かいのCXの人が身体を一切、動かさないから、と、どちらかと云うと組織的な考えにどっぷり漬かり、支配されたのであった。