3・15

昼間からミスドでドーナツ食べ放題をやっている中学生が見渡す限りで三グループくらいいる。

彼らは黙々とドーナッツを摂取している。1500円・60分のこのイベントはどこの店舗でも実施されているかはわからないが、愛知県知立駅前店では盛大にそれが執り行われていた。

あとで妻に聞いたら、逆に聞くけどアンタやったことないわけ?みたいな顔をされた。それほどメジャーなものなのか。

わたしの横の男子中学生は二人してドーナツを皿から溢れんばかりに搭載して淡々と口を動かしていた。gif画像のように。

彼らは二回三回とオカワリに行くものの、毎回皿に載るドーナッツの数は減っていく。そして咀嚼の速度も徐々にゆっくりになってやがて止む。

 


妻は最近ドクターマリオをやっている。彼女は作業ゲーが大好物で、テトリスもずっとやってるし、オーバークックというただ無限に料理を作り続けるゲームも無限時間プレーできる。

彼女はドクターマリオがゲームとして難易度が高くてオモロイとよく評するのだが、ドクターマリオの設定だけには、かねてから疑問を呈していた。

ドクターマリオというゲームについて、注釈しておくと骨子としてはテトリスライクなゲームだ。領域内に三色の菌ブロックが予め配置されていて、ドクターマリオが放った薬で菌を撃滅させるだけの呆れるほど単純極まりないゲームである。

白衣を纏ったドクターマリオが画面の右上を陣取っており、彼はポンポコ薬を放る。

プレーヤーがやるべき事は、菌と同じ色を四つ組み合わせて、菌を消却することのみである。

基本的にゲームの時間進行とともにドクターの薬を放り込む速度が上がっていく。徐々に加速していくのが普通にわかる。

妻は理解不能な嗚咽をあげる。シャウトもする。ドクターマリオはドクターに関わらず、プレイヤーを困惑させる存在に成り下がっている。

プレイヤーは何と一対一なのかわからないけど。投薬加速の結果として、患者の体内に残された菌はカオス状態に配置された効用のない薬に埋もれていってしまう。

 


ミスドを食いすぎて腹一杯になって気持ち悪くなった中学生ですら、ドーナッツを体内に取り込む速度を絞るというのに、ドクターマリオは投薬を加速して自分やプレーヤーや患者の首を絞めることを平然とやる。

でもよくよく考えるとドクターマリオはドクター以前にエンターテイナーでも同時にあるためにそれは仕方のないことなのかもしれない。

彼は患者の命を救うこととと、プレイヤーを楽しませるという背中合わせの事項を宿命的に抱える苦労人である。

そう考えると、ミスドを食いすぎて腹一杯になっても加速的にドーナツを口に運び続ける中学生がいたとしても、悪くはないのかもしれない。