悪魔の実

常にテーブルの真ん中の洒落たバスケットに無造作に置かれているその悪魔


可愛らしく少しひしゃげた球状、柔らかさ、手にfitする安心感…





私は珈琲を飲むため、ティファールで湯を沸かそうと思い、慣れた手つきで浄水を入れセットし電源を入れた。自室に戻り卒論に向き合う


ほんの1分程度、直ちに沸騰を迎える。もう一度席を立ちキッチンに向かう


その時である、悪魔の囁くのが聞こえてくる


その囁きの方向たるはよく分からないが、ただ、その囁きに対してあまりにも私自身が無防備で従順であり、さも自然にその主たるに導かれてしまう


それがあまりにも自然過ぎて、それを体内に取り込んだことすら一片の記憶に残らず、特別それについて考えることもなく。あの悪魔の洗脳を受ける周囲の時間は綺麗さっぱり切り取られてしまう



夜になり、流しで洗い物を終え、その黄色の皮を処理しようとした時にようやく、ようやく私に実感というものが訪れる