ほっとけーき

「こんにちは、さて今日もやってまいりましたね

「こんにちは

「さて、今日のお料理ですが…………

「はい…

「ほ…

「ほ?

「っとけーきです

「あー…ホットケーキですか。ホットケーキ…先生は何故ホットケーキというチョイスをなさったのでしょう?

「お好み焼きが食べたかったんですが、先々週くらいの放送で、お好み焼き回がありましたでしょう?

「あ…はい…ただ、ホットケーキって、ボールにホットケーキミックス入れて、卵入れて水入れて混ぜて焼けばお終いでは…そもそもの分類として、お好み焼きという概念の中には、ホットケーキも含まれるのではないでしょうか?

「だから結局、今日も先々週の放送と内容が被るということですか?

「はい

「でも、今私が食べたくもないもの作ってもしょうがないでしょう。私はね、人間の熱意が直接に料理に向いている、注ぎ込まれるそういうリアルな番組を作りたいんです。ここでは以前からやってるように一々砂糖〇〇g、塩〇〇gとかチマチマ馬鹿なことしませんでしょ?正直どうでもいいことなんです、そんな些細なことは。

「大事なのは、視聴者の方が料理をしたい!と思うことなんですよね!!

「その通り、あなたも最近理解してきましたね

「では、そろそろ本題の方へ……

「はい。使うのは、ホットケーキミックスと水と卵です

「はい

「はい

「え?まさかそれだけですか…先生のオリジナリティな部分は…

「普遍的な物を排除することを好む傾向とでも言いましょうか。あなたもその類ですか?

「…そうですね、周りの人間と同じ事をしてると集団の中に、社会に埋没してしまうような気がします

「そうですか、それが普通だと思います。私もそうですからね。オリジナリティは進歩を生み出すことも時にはありますが、その歩幅はとても小さな刻み、微小な距離の積み重ねなんです

「というと?

「ですから、私が今から作ろうとするホットケーキも貴女にはオリジナリティに欠けると思われるかもしれません。それは今の所は地味でけち臭い、小さな工夫なんです。しかし、例えば私がこのホットケーキミックスの中にxo醬を入れて、卵を入れ混ぜて、これが私のホットケーキです!!と主張したところで、それは到底、進歩とは言えないと思います。それはそれは暴走です

「はぁ…お説教はこの辺りで…お時間がそろそろ

「そうですね、やりましょうかね