ぐるぐるー@

私は電車を待った


湿っぽい空気感、ホームの屋根の間から見て取れる、その力の抜けた、脱力しきった腑抜けた空。ちょうどそこから雨が少し、滴り落ちてきたところだった。その中から、ほんのりと春の熱を私は感じ取れた


私はコートを脱ぎ、地面に置いたバックの上に
一旦退避させて、それから薄手のセーターを脱いだ。


私は思い切って、自分の思考や感覚を少しだけ前に、前へと前進させた。新緑の季節、騒がしい蟬の声や、あの鬱陶しい陽気を思い浮かべようと、そう試みた


ただ、その試みは中々成就しなかった。当たり前のように何度となく経験した夏という季節、それが単語として、不連続な言葉として断片的に出てくるが、それは平素でつまらなく、夏という一つの物語を紡ぐにはやはり物足りなさを感じた


でも、私はそれでいいと思った。現在の季節に埋没することが、逆側にいるそれを忘れさせてしまうというこの感覚は…かえって、そこに訪れた時の感動や新鮮味を感じさせる、そんな気がした


季節という枠組みを越えて、私たちの身の回りは常に循環している。円を描きながら、一回転するとまた少し前進し-螺旋をなぞるように…少なくとも、循環というものがもたらすものと、この少しばかりの前進が相まって、新しさを私に与え、生きる上での活力の一部となっているように感じた

神楽坂

神楽坂を、私は歩いていた


そのゆっくりとした歩みは、四年間の永かったここでの生活、それを思い起こすようであった。昼下がり、この時間帯は奥様方の集団がポツポツと、狭い路地に力強い歩みで、そして大きく繊細そうな笑い声を振り撒いていた。


私はちょうど腹が減っていたので、何処かの店に入ろうかと彷徨っていた。この坂を歩くことも、もうそう無いことだと思うと、少し粋な店でランチでもと思ったが…それは財布が許さなかった


辺りをぐるぐると、見回していても、特に思い入れのいる店や食べたいものも見つかる事はなく、とうとう坂の下の交差点のところまで下ってきてしまった


妥協に妥協を重ねた私は、結局銀だこに入っていった。というのも、たこ焼き8個入りが200円引きだか何とかだった


この店は、中が立ち飲み屋のような空間になっており、勿論テイクアウトも可能だった。お持ち帰りのお客は外に二、三人の短列を形成していた。坂の上から吹き抜ける冷たい風と、陽の光が差し込まないこの坂特有の日陰、それが相まってもなお、たこ焼きを待つ彼等の熱に自然と、私は惹かれたのかもしれない


そんな彼らを横目で称賛しつつ中に入ると、二人掛けの椅子と小さな丸テーブルが縦に、ズラリと並んでいた。右手には、透明なガラスを挟んで、無愛想な厚化粧のねぇちゃんが淡々と、銀の串を両手に小球を巧みに廻していた


私はてきとうな席、この女の仕事振りを望める席に腰を下ろし、テーブルを挟んで向かいの椅子に鞄を置いた


店内は、OL二人組と、ほぼ私と同時に入店した爪楊枝を口に挟みながら競馬新聞を広げる中年のおっさんとだけだった


「あれ、私達忘れられてるかなー

「いやー、でも流石にこの人数だしそれはないっしょ笑


OL二人は言った


話を聞いていると、この二人はもう随分待たされている感じだった。私はガラス越しにたこ焼きを焼く女の他のもう一人の男店員に声をかけて、至極シンプルなたこ焼きを注文した


別に私は時間があったので、時間がかかるのは承知で本でも開いて待っていようと思った


それから少しして、奥の競馬新聞のおっさんが男性店員を呼んだ


「すみません、たこ焼きを一つ。今安いんでしょ?

「はい、たこ焼きの方ですが…少々お時間の方が…かかってしまうかもしれませんが…

「別にいいよ、それは


そう言ってまた新聞を広げ始めた


私はこの会話を聞いて若干得をしたような気になっていた。というのも、私にはこの店員から時間を要することを告げられなかったからであった。競馬のおっさんより少し早く注文した私が、次回の焼けるタイミングにギリギリ滑り込んだといった具合であろうと思った


OLのところにもたこ焼きが運ばれてきた。OL達は、これは二人で一つで正解だったねと楽しそうにお喋りしながら、丸々したそれを幸せそうに口に運んでいた


それから少しして、男性店員がお盆にたこ焼きを二つ乗せて此方に歩いてくる。その一つを競馬新聞の前に置くと、私の方に向かってきてそれを差し出した


その瞬間、空腹を満たせる喜びと、何かに納得しない心のわだかまりのようなものを明らかに私は抱え込んでいた。


一瞬で平らげた私は、店を出ると速足で交差点に出た。赤信号、その待ち時間はいつもより永いものに感じた。

走れマヨネーズ

こんばんわ


今日はママチャリに跨って少し走ったのですが、脚が円を描く度に擦れて擦れて擦れるのですがそこまで痛みも感じることもなく、少しずつ外界に、この世界に適用してきているのを実感する次第です


しかし、事件は起きました。私がママチャリの遠征からこの僅かな手ごたえとともに帰宅して、一時間程度経過した夕飯の席でです


痒い、かよいかよい


私の、先端先進理工学部が、痒い。


久しぶりの両親との夕食、私は少し腰を浮かせ乗り出してテーブルの中央にある牡蠣フライを箸で摘もうとして、思い出したかのように言った。痒みに支配されながら。


「あっ!マヨネーズ持ってくるわ!


私は急いで立ち上がった、我慢が臨界点をゆうに突破していた。私はリビングの裏のキッチンにある冷蔵庫に向かった。冷蔵庫からマヨネーズを……マヨネーズの位置は十分に把握していた、いつもの定位置。開けた扉の牛乳の横!!マヨネーズよ!早く私から逃げてくれ!私の疼きが収まるまで!!!この痒みが!早く!!走れ!!!


私は手をクロスさせる形で左手で冷蔵庫の扉をおさえながら、右手をズボンにツッコミ、精一杯ぶるぶるさせたり太ももを擦り合わせてモゾモゾ動かしたりした。目先には、底にマヨネーズが溜まった赤いキャップの、不思議なフォルムのチューブが牛乳パックの横にいた。私には兎に角、時間がなかった


「あら、マヨネーズなかったかしら?


食卓の方から母の罪無き、純粋なる問いかけがかえって私の胸に、痛切に突き刺ささった


母が立ち上がろうと椅子を引く不快な音が、私の耳に届いた


その刹那、


「ソースあるからいいよ、マヨネーズは


リビングにいる父が言った


「あらそう…マヨネーズあったと思うけど…分かった、明日日曜だし買っておくよ


と母が一言、引いた椅子を戻して、又着席した


僕は、それにお願い!!とてきとうに調子を合わせた。とっさにポケットに、隠蔽のため冷蔵庫から取り出したそれをねじ込んだ


ところが、マヨネーズの嵩張るボディを急いで無理矢理詰め込むと、それがあろうことか、先端に干渉した。


幸か不幸か、その痛みは、どこか遠くへと、痒みを消し去ってくれた

けものフレンズ

最近巷で話題の「けものフレンズ」を一通り拝見しました


一言、おもしろいです。あまり普段アニメ等に馴染みがない私でも楽しめました


物語りの内容ですが、


舞台は巨大なサファリパーク!!!そこは触って、直接動物と触れ合うことができる楽しい場所です。好奇心旺盛なカバンはパークの案内役ロボットのボスとサーバルキャットと共にパーク内の各エリアを、そこで生活する動物達と触れ合いながら冒険するというものです


このアニメを観た方だったら、そんな物語りじゃねぇとツッコミを入れたかと思います。そうです。それは私も理解しているつもりです


私が今語ったのは、あくまでも表層的なもので、この表層的なものを、建前を身に纏いながら進行している点がこのお話の魅力を最大限に引き立てているのではと思うのです


少し大袈裟かもしれませんが、この物語りのテーマはズバリ「人間とはなんや」ではないでしょうか?


物語りの初め、主人公で人間であるカバンちゃんはサーバルキャットのサーバルとパーク内で出会います。この辺りは、人間であるカバンちゃんは、動物であるサーバルと対比して巧みに描かれています。その対比は排熱処理などの生理的なものや、人間の道具利用など、基本的で機械的な差異が淡々と語られていきます


その後も、冒険の中で人間の知能の優位性を示します。言語や文字などもそこに含まれます


そして、最新の8話。先程私も観たのですが、違和感と申しますか、この物語り全体のリズムが、呼吸が、少し変化したのを感じました


というのも、この8話は旅先の動物であるペンギン達からより人間的なものを彷彿させたからです。これまでは、カバンちゃんを通して描かれる人間の優位性でした。カバンちゃんが道具を駆使し、知恵を絞り解決策を見出し、文字を読み…しかしながら8話ではカバンちゃんが第三者的な立ち位置から、人間社会の云々みたいなものに直面するペンギン五人組アイドルグループのドラマに出会います


この出来事は、この物語りで唯一の人間であるカバンちゃんに対する、一つの社会を形成した組織としての摩擦、人間らしさの一端を提示した教訓めいたものだと勝手に受け取りました


来週も楽しみに待ってます!!!

経過

2日経ちました。手術を終えて


実際、つまらないことに精神等に変化はないです。その前後において。


肉体的には、多少は辛いです。歩行するのが、億劫な程に…3日目の今日になって少し落ち着いてきたという程です


人間は少し経ってから昔を振り返って、理由付け、正当化を行う癖があるので…その時にまたズラズラと書いていければ、と思います。

真性包茎手術を明日に控えた人

いやーここまで長かった…


思えば、小学二年生からだったかな?彼の存在を意識するようになったのは…


彼ったら、ぷっくり膨れるんですよ、それが可愛くて良く周りの友達を呼んで彼を熱心に紹介していました


しかしある時です。小学五年くらいでしょうか?ある友人が彼に向かってこう言い放ったんです


「お前まだ剥けてないん?


この言葉は、このときの私の中にそこまで反響せず、するりするりと透過していった。そのときは


しかし、ジワジワと私の中を蝕んでいきました。そう、ジワジワと…


そしてときは今

真性包茎手術を明後日に控えた人

こんばんは、山本です


いや、とうとう明後日に迫ってきました汁緊張しております汁


昼間、病院の方から電話がかかってきて内容等を再確認しました。その際、担当医の方から何か聞いておきたいことはあるかと尋ねられたので、実際の話、冗談抜きで術後の勃起時痛みはどの程度か聞きました。お医者さんは


「まぁなんとか我慢はできるよ」

と微妙な一言


というのも、確認したのは水曜は昼間に手術をして、夕方から公立に合格した生徒さん宅招かれる、というイベントが控えているんですな。


まぁ招かれるだけなら挨拶して何か軽いお食事?雑談等でもして帰宅でハッピーなんですが…


生徒宅にはPSVRがあって、前に話題になったbiohazard7とサマーレッスン?(大分前だな)だかをやりたいやりたいと私がずっと生徒の前で騒いでいて、受験が終わった後に体験させてもらう約束を取り付けていたんですね。biohazardはまぁいいとして…ちょいエロ要素の入ったサマーレッスン…………兎に角、プレイ中冷静に冷静で居られれば大丈夫なのですが


せっかく合格をお祝いしに生徒宅に遊びに行った先生が、前々からやりたがってたサマーレッスンのプレイ最中に術後の痛みに悶えだしたらと思うと


少し心配です

年末という時期はお好きですか?

年が明けてもう幾らか経ちましたが


突然ですが、年末はお好きですか?


少々、退屈なお話になるかもしれませんが…私はその時間が好きです。そして、ほとんど推測でしか無いですが多くの人が年末という時期に対して特別な感情を抱いてることと私は思っております


大雑把に、年末とはクリスマスから紅白まで、一応、きっぱりと定義しておきましょう


年末の普遍的な大きなイベントとしてはクリスマスでしょうか?べつに私は煽っている訳ではありません。街が煌びやかな光に溢れ、賑やかに、そして裏方ではひっそりと着実に、秘密裏に物事が進行している。私は好きです。小さい頃から今に至るまで。


ただ、クリスマスというイベント、それを取り除いたとしても、私のこの時期への愛は有り余ってしまうのです…


話は変わりますが。日にちや月、そういうものに意識を向けること-例えば今日は2月26日、私にとっては国立の二次試験、緊張感のある密室で物理と化学を必死こいて解いていたのを思い起こしたりする


或る自分にとっての大きな出来事とその日付は謂わば兄弟みたいなもので…彼女と付き合った日、自分の誕生日、。それらは密接に絡み合い私の中に格納されていく…日付というそのラベルはその出来事を思い起こし、その出来事は日付を想起させ、両者を往き来する


12月26日、12月27日、12月28日、12月29日、12月30日、12月31日


通常では大きな出来事に対して、日付というラベルが貼られるが、この時期においては何の変哲もない日常に対して、予期されないこのラベルが正確に、突如として付与される。それは年末という年の終わりという節目へと向かう助走区間、それが引き立て役となっているという気を受ける


そういう意味において、私にとってこの時間は特別な、特異な感覚を与える

Part3

 遠くから、足音が迫ったーその音は次第に大きくなり、自身の体の規則的な揺らぎと相まって、不気味な様相を奏でた。

 

彼は意識的に目を開いた、が目に飛び込んできたのは暗黒。窓から入り込む薄く、細い月明かりが長椅子の端にある鉄製の手すりに反射し、やっとのこと彼の網膜に到達した。その光はあまりにも頼りなく、ただ、彼を不安にさせる以外の効力は持たなかった。そればかりか例の足音はもう、ほんの近くに来ているのは確実だった。

 

無意識のうちに、立ち上がるとその足音の来る方向と逆、ちょうど反対方向に向かって、小さく小走りに進んでいた。

 

隣の車両に渡るドアに手をかけたとき、車内に声が響いた

 

「お客様どう致しましたか?」

 

若手の駅員だろうか?その言葉が引き戸に手をかけた彼の背中に、見事に突き刺さった。彼は何から逃げていたのだろうか、それは自身にも理解できなかった

 

ゆっくりと後ろを向き、声の方、その人の輪郭に向かって口を開いた

 

「誤って、回送電車に乗り込んでしまいました。わたしはどうしたらよいでしょうか?

 

「どちらにお向かいでしょうか」

駅員はゆっくりと言った。

 

「わたしは、西船橋でいつもの各停に乗って家に帰るつもりでした・・・それだけです

各停を待っていて寒かったので、反対に止まっていた回送で暖をとって待っていたら、つい、おちおち寝てしまったんです」

 

「この回送は車両センターに向かっているので、到着し次第、タクシーなどでご帰宅ください」

丁寧な、少し背の高い駅員は少し頭を下げ、横を通り過ぎていった。

 

彼は、立ったまま手すりを掴み、外を見ていた。外は疎らな光が灯り、下には帰宅途中のサラリーマンが最後の力を振り絞り、歩を進めていた。町は一日を終え、ゆっくりと、静かにその瞼を下そうとしているかのようだった。

 

車両センター、その言葉にはあまり聞き覚えがなかった。それが何処に存在し、家までどの程度の物理的距離なのか。そもそも、金もなかった。それでも、この列車は夜闇の中を確かに、進んでいた。彼は思い出していた、あの焦燥感を。そう、焦りを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Part2

彼は特段、迷うしぐさも見せずに列の後方をさっと抜け出して、車内に入った。入り口に足をかけたその刹那に、空間でもてはやされ、我慢ならなくなったその空気達、それらが、体を包見込むのが分かった。

 

眼前には、白く整然と並ぶつり革、その下には緑色のふっくらと、そして柔らかそうな長椅子が据え付けられており、その背もたれには格子状の模様が刻まれている。無論、誰一人としていない車内。彼は長椅子のどこに座るか、隅か?中央か?真ん中の少し右寄りか?などを少し考え、彼は隅に座った。

 

その長椅子は彼の全体重を受け止めた。脚の裏から流れ出る心地の良い風が、この寂びれた車内にまだ淡く、弱く残存する焦燥、疲労、安堵感といったものもまでもを乗せて体を徐々に、下から浸食していった。少しして、彼は眠りに堕ちた。彼はその長椅子の悪魔に従順だった。夢想の狭間を彼は行き来しながら、その椅子の下、さらに深くから感じ取ることができる、その柔らかな揺らぎの在り処、根源を正確に射止め、意識するのは少し、先のことだった。

 

実際、彼の夢想への突入は、必然だった。表層的には、帰宅するための電車を待つため、回送列車で暖を取るのが当初の目的であったが・・それはあくまでも"当初の目的"であったし、それは彼の中で消化され、てきとうに揉み消されていた