あるあるをもとめて

わたしの前でお嫁様は数独に取り組んでいる。コンビニで売ってる段位認定ができる数独本で、お嫁様はコンビニでトイレを借りたついでに購入なさったのを、わたくしはしっかりと承知しているのだ。

傍のスピーカーからはTBSラジオ、ハライチのターンが永遠、流れおり、それも年越しの放送分での"あるある"ネタを108の煩悩を浄める除夜の鐘のならって、視聴者からぶん投げられる108あるあるをハライチ岩井が片っ端から不協和音的リズム感で認定していくといった内容である。

放送中のあるあるを一つだけ取り上げてみると、#大抵の唐揚げ屋金賞とりがち#というもので例の数独で大忙しのお嫁様も細々、わらい始めたかと思えばゲラゲラ笑いだしてとうとうペンををばこーーんとテーブルに投げ出してクロスワードの問題(制限時間60分)このもんだいむりーぃーむずすぎーとニコニコ嘆きをわたしに振り撒いてくれたわけだが。

そのときというのも、わたしはお嫁様の可愛さが爆ぜているまさにその最中、わたしの思考はあるあるをただ、模索していた。あるあるを渇望した。かなり乾いていた。わたしは広漠とした砂の丘にいた。フタコブ駱駝の背中、コブとコブの間にわたしの股間がすっぽり収まっていて何やらむず痒い。蒸れる。蜃気楼、空と砂の境界の靄からピンクのツタンカーメンが現れる。刹那わたしの眼前に移動、フタコブ駱駝の脚がガクリと崩れ落ちたわたしも平衡感覚を失いながら真っ逆さまに砂の上に叩きつけられる。ピンクツタンカーメンがフタコブ駱駝細長い脚を蹴飛ばすか何かをして、はては、どちらにせよ何らかの物理的暴力的処置を、この無防備な駱駝に施したのだろう。

わたしは目を開けると、顔にパックを付箋みたくぺたぺた貼り付け妻の姿があった。わたしは結局、ラジオを聴きながら、片手間に妻のクロスワードを手伝った。