3・22
本棚というものがある。
本棚は基本的に本を収納したりすることを目的にしている。
だから我々が本棚と言われて思い浮かべるもの、それは本が整然と並んでいる状態があって、厳粛で荘厳な雰囲気を醸す木目の効いて落ち着きのある黒トーンがその場を制している状況。
これは一種、神聖な領域とまでは言わないにせよ、私たちの本棚の原風景は少なくとも、いかがわしくはないだろう。
わたしはお嫁様と二人で本棚を築いた。破風板をホームセンターで買って。
築いた、というと城を建造したようだけど、あながちその表現は間違いではないように思う。堀を作り、敵の侵入を阻むべく複雑な入り組んだ土塁や塀を建て、ド派手な天守閣を中央に鎮座させる。
本棚も、本棚で、木や鉄材の枠組みというだけのものではない。
そこの棚に置く物、木材、生み出される空間とそれらの総合が本棚たる物であると考える。
お嫁様とわたしが築いた本棚は、双方の脳内を参照してつつ反映させた厳粛極まりない空間ということができるかもしれない。
お嫁様の尊いジャニーズグッズは掘れば掘るほど湧き出てくるし、わたしの乱読気味に買いあさってほとんど読まれていない、いわゆる堅苦しい積読本も棚にとりあえず詰め込んだ。まだ入るかもしれない。入らなければ横に伸長するだろう。この本棚は。
海水と淡水が交わる汽水域のように、この本棚は、本棚の原風景とジャニーズグッズが交わる交差点であって、推しと集合と位相、躍動感あるアクリルスタンドとカント、荒木飛呂彦とキスマイが顔を合わせる、なんというか、スマブラ的な?あの途方もないオフ会が実施されている危険区域なのかもしれない。