しゅっぱつ

私は家を出て、スーツケースを引きずっていた

 

スーツケースのキャスターが時折の急な凹凸に悲鳴を上げつつも、わたしの後ろをついて来た

 

少しして、そういえば朝飯を食ってないなと思い出したので地元の駅前のコンビニに入った。コーヒーの空のカップと、フィッシュバーガーを見知った店員から受け取ると、レジ脇の抽出機のところに移って、空のカップを置き、ボタンを押した。その間に、奥でatmを使っていた女が不機嫌そうな顔で大袈裟に、大股になってわたしのスーツケースを跨いで店を去った。

 

熱々のコーヒーを左手に、右手にスーツケースを引きながら自動ドアをくぐった私は、鈍より冴えない大気に身を委ねた…次ここに戻るのはいつだろうか、と