駐輪場

 

昼休憩。真っ暗で爛れたオフィスに雲間から一縷の光が覗かせたのだろうか、陽がさっと入る。

わたしは細々と豆乳を飲み干した。うまい。これ以上にうまいものは世に溢れるだろうが、何というか、これがまた手頃な旨さなのである。

外に出ようと、そうおもった。

日本には、たまたま四季とかいう目まぐるしい洗濯機みたいなものがあって、これは大変に変化に富むもので、この特段、桜が咲くか咲ぬかの境界、不連続ポイントに立つ今日の日和ほど私を幸せにしてくれることはないかもしれない。

わたしは工場の隅の通りを歩く。目の前に広がるのは工場排水の処理施設だろうか、研究棟の前に神妙な面持ちで鎮座するそれである。

さしあたり、わたしの目的はこの昼間の散歩の行為そのものにはなく、他でもない。

駐輪場が好きか?と問われれば、私は問答無用で、全身全霊を込めて、好きだと答える。ただ、一つだけ、たった一つだけ条件がある。

それは、時間である。すなわち、昼限定だ。

静まりかえる昼間の駐輪場は、何も起こらない。本当に、何も起こらない。昼ドラヒロインの想像妊娠が発覚し、姑富豪旦那の顔面が蒼白するイベントも発生しなけれは、不法投棄チャリがボコスカ投げ込まれる現場に立ち会うことすら、ままならない。

私ごときのチンケな妄想力では、到底この現状に変革をもたらすことは、それはそれは無理だろう。

ただ、この陽気を前に、そんなことすら大した意味は持たないだろうが