いんこーす

「いやー、なかなか、彼はいんこーすをついてきますね

「はい、しかしながら、先程からの連打はすべて、彼のその、例のいんこーすのすとれーとを捉えた、そういったものですがどうでしょう?

「そうですね、いんこーす狙い自体は、それ自体は一向に構わないというか、むしろ狙うべきものだと思うのですが、時折、あうとこーすも織り交ぜる。そんなスタイルに徐々にシフトしていく必要性があるかと、おもいます」

 

なるほど…ひたすらに、永久に、いんこーすを投げ続ければ…いんこーすが、相手にとっての当初のいんこーすとは、違った意味のものになるということ、すなわちー鋭い変遷とか落差とか、そういったものが求められるのかと。露出した太ももに妙に冷えた、風の鬱陶しさを感じながら

 

わたしは、至って快適にしていた。手脚をだらんと、だらしなく四方に伸ばしてる。憂鬱な砂埃も、憂鬱な汗も湿度も、照り返す過激な陽の光も、そんなものはあるはずも無いし、土の香りも勿論、インコースに投球が収まるのを横目で見守る必要もない。わたしの現在の仕事、せめてもの仕事は、身体の横に広がるベランダに続くこの窓から、時折、外を眺めて、しっとりとぶ厚い雲を眺めて、目を細める位であろうか……天気について話すと、人間、終わりだ。という類の話を聞くが、わたしは常として、アウトコースを織り交ぜるのを好む人間であるから…どうか、お許しを願いたい