女哲学者

あなたはもう、存在してるだけでオッケー👌

女哲学者の新居知里はファミレスで0カロリーコーラを力なく吸い上げる私に底抜けに明るくそう言った。

大丈夫!大丈夫、ほら発達障害とかそこら辺にいっぱいいるし、オケラもいっぱいいるでしょ?オケラだって精一杯生きてるでしょ?あれそういえばオケラってなんだっけ?私、いつもこういときオケラの話よく出すんだけど、オケラってねばねばオクラと芋虫足して2で割ってからおもいっきしシェイクシェイクして頭から土の中に突っ込んだみたいなフォルムしてんだけど、ねぇ聞いてる?あれオケラって頭と胴体わかれてるの?昆虫?不完全変態?これわたし四角い頭を丸くしたときやったかも〜。でも、丸顔って言われるのはなんか癪だけど。

私はそんな話を聞いていなかった。集中できなかった。

帰り道にマッチングしたこの自称女哲学者と3言メッセージのやりとりをしてから、気付いたら御徒町の大通り沿いのファミレスに腰を落ち着けており、気づけばただ一方的にわたしは仕事で犯した自分の落ち度をこの女哲学者に吐露したのだった。

彼女は思い出したかのように、パッカーのポケットから4mm黒ボールペンをだして、テーブルの上にあるわたしの財布から自然な所作で札を一枚だけ抜き取った。か細く今にも切れそうな黒蜜を上から垂らしたようなその文字は現存在、最高💗。わたしは、それを焦点が合っていないことを気にも止めず暫くぼっーと見た。

女哲学者の姿はすでにいなかった。食後に頼んだクリーム餡蜜は、じつはまだ来ていない。