2・23

昨日は19時半に頭がおかしくなって寝倒れたてしまった山本さんは、本日は8時に起床。疲労感はゼロだが、無限に眠ることができる。

二日酔いのような気怠すぎる感覚はつらくないといえば嘘になるが、正直慣れてきしまった。

 


御起床の姫君に昨晩は即刻、床に伏したことについての謝罪会見を開いてから、やはり昨日一日中変なようわからん説法みたいな読書をしちょるから頭がおかしくなるんであって、やめたほうがよかよ?と、誠にクリティカルなエセ関西弁でアドバイスを頂いた。至極、そのとおりである。頭を使うことに普段から慣れていない人間が知的っぽいことを急にやり始めたって狂うだけだよと。身体を動かしなさいと、彼女は言う。打ちっぱなしでもいいから。まじで純粋理性批判を読むんならめっちゃシコってる方が今のあんたの人生は良くなるとも言った。

究極完全体イエスマンのわたしはその通りだと思った。今日は天気も良いし何とかニンの脳内合成も大層捗ることだろうし、三、四年ぶりにウーバーイーツでもしてこようとなった。

その前に風呂でも入ろうと思い立ち湯を貯めた。43度。そこにお嫁様おすすめの入浴剤を、粉々、お骨をヘリから大海に散布するごとく儀礼的にふりかけた。

深く綺麗な青。何ちゃらブルーなんだろうな、なんちゃらエメラルドではないしなんちゃらターコイズ感もない。good sleep と銘打つこの入浴剤は、わたしからウーバーイーツの気力を綺麗に切り取ってくれた。

過去一人暮らしの頃は湯を貯めるなる奇想天外な発想をわたしは持っていなかった。結婚するまではあそこの空間はただのミステリアスな仄暗いデットスペースだった。ミイラかなにかを安置するには最適かとも思ったこともあったが湿度が異常なので即座に却下された。そもそもミイラの製法をわたしなぞが知るわけがないし、ふしぎ発見エジプト編で目にした程度のアンポンタンでは到底不可能だし、そもそものミイラ対象もよくわからない。

 


とりあえず副業の応募の返答がきていたので、本日はそれを返すくらいのことは最低限しないと何の進捗もないことになる。まあそれでもいいのだけれど。家の中での面目が保たれない。でも保つための面目がそもそもない。使い回しの職務経歴書を右上の日付だけ訂正して出すということをわたしは不毛にも繰り返している。

そのメールとやらが明朝4時半にきていたのでそりゃ自動送信かと思ったが、宛名が山中様になっている。わたしを山中伸弥富士五湖と勘違いしたか?応募フォームに山中と誤記した記憶はなかった。その凡ミスの可能性は十分に考えられたのだが。

ただこのデータ解析案件がpython必須だったのでその点で脈なしであることはほぼほぼ確定気味である。というのもわたしはこれまで愛用してきたツールといえば遡ること飛鳥時代fortranであって、実務レベルでpythonなんぞ使ったこともない。

とにかく休職中なるわたしにとって、気に病むのは毒である。仏様のようなお嫁様も座椅子に深々、その御腰をいたわりながらにっこりと、あまり貴方の小脳で考えなさるな、とおっしゃってくれた。

御言葉をいただいたわたしは丹念に彼女の肩背を揉み込んだ。