2022.2.23

わたしは一つ予言めいた真似事をしようと思う。

あなたは近い将来におもむろに右か左か、それはわからんが、とりあえずは己の胸を我が子の方に差し出してしまう、押し込んでしまう、そんな瞬間が訪れようとしている、ということだ。

ここでもっとも大事なことは、これは男女を超えた普遍性をもった事実であるということだ。このことは覚えておかねばなるまい。

わたしは、いやは俺は。このことを実際に経験した人間である。

俺は娘を左手で抱きつつ頭を右手で抱えて俺の右胸に向かっておもむろに押し込んでしまった張本人でもあるのだが、これは古今東西全類人猿が通る道なのだと心に言い聞かせつつも、ひやりと何があたった。己の茶色く黒ずんだ乳首をおれは見た。娘はというとガブリ怪訝な表情で虚空を咥えた。

俺のには潤いはない。2本の背の高い真夏のひまわりのような真っ直ぐな縮毛だけが皮肉にも、天に腕を伸ばすだけである。

その瞬間に、俺ははじめて理解した。

 

あぁおれには、おっぱいはないのだと。