ナース

ナースコール。すなわち、それは、ひとたびそのボタンを押したならばナースが我々の目の前に現れる、そんなシステムだ。

1回押せば1人。2回押せば2人。3回押せば3人。そんな具合でシャンプーのように1プッシュごとに1ナースが現れるのか?そう問うてみると、甚だ、そんなことはないような気がするのである。私が仮にもナースであるならば、2回目以降のコールが続けざまに入ったならばこの人はせっかちなんだなぁとか、とかただ思うかもしれない。そもそも、例えば夜勤帯であればワンオペも考えられるので、何度押そうと1人であろう。

そして、ナースコールは、何かが発生したときに押すものだ、ということだ。何か理由が必要だ。これは裏を返せば何も起こっていない場合は、ナースを呼ぶことはできないということになる。我々は有事の際にナースに助けを求めるのである。ただ、有事の際といっても、街の至る所にナースコールが設置されているわけではないことに注意しなければならない。基本的には、私の知る限りは病室に設置されており、病室からナースを呼ぶことなる。その点では、サイゼリアなどのファミレスと同様であり、レストランの中以外から店員を呼ぶことは、叶わない。

 

今、私はナースについて述べたが、特に有事でもないのに(理由もないのに)、どんな場所からでも何者かを呼べると、そういう状況について、どれほどの意味があるか。

理由もないのにわざわざ遠方にはるばる行く必要は無いように思われるかもしれないが、逆に、ここまで理由が希薄にも関わらず欲されている/欲してるというそれ自体に、その人間そのものへの愛が際立つというか、浮き上がってくるように思う。

私はこのナースをのちに妻と呼んでいる。