半年ぶりのウッス!

半年ぶりに出社した。

 

工場の中を歩いて、いつものように部署の建屋に向かう。

いつもように。

いつものように...?(半年ぶりのalways)

特にこれとて、わたしの知るいつもの工場の景色だった。フォークリフトが忙しなく動き続ける朝の景色はもはや工場の定番。製品の搬入に関わる人たちの朝は、明らかに早い。

これは、明らかに、俺の知ってるいつもの範疇だ...。

 

ははは。こんなもんかと、思ってしまった。ビビリにビビって小便のひとつや二つはチビルと思っていたが、大したことはないではないかと。

何も変わらんのだ。

と、思う一方で目に見えるような変化がこの期間で起きているのならば、それもそれでちょっと身構えてしまう。

 

工場を脇を十分間ほど散歩すると、事業所につく。

事業所の玄関の横にある喫煙所には人が居なかった。

半年前のいつもはここが生管の室長なり設計の主査なりの大御所が灰煙とたむろしている光景が広がっていた。

はずだが。

いない。

 

これは私の中ではいい変化だった。喫煙所が単に嫌だとかではなくて、毎朝、認知されている大御所に喫煙所の脇を通る際に頭を小刻みに下げてウッスウッスみたいなのをやらねばならないのが鬱陶しかった。

別に向こうも私にウッスウッスをされたかぁないだろうし私としてもウッスウッスなぞをしたくはないのだが、身体が勝手にあろうことかウッスウッスしてしまうのである。

 

あーぁ!!これこれ!会社特有の感覚が蘇ってきた。

みるみるうちに鮮明になりつつあった。誰もおらん喫煙所の前で。半年前のいつもを思い出しながら。

そして私はその5分後に他部署の先輩Bと久々の感動の会合を果たすことになる。

のだが、その前に先輩Bのプロパティを簡単に示しておく。

 

・女性

・入社年度1か2上

・妄想だけど多分コインランドリーは繊維を痛めないよう低温派

・妄想だけどキャンプにコストコのマショマロを持ってくる

・妄想だけど知らない人についてきそう

・私以上のウッスウッス属性(これは事実)

 

この先輩Bとは直接会話をしたことがないが、半年前はフロアですれ違う度に申し訳なさそうにいちべつしてからのウッスウッスは強烈だった。

私のような四川中華料理屋バイト仕込みのウッスウッスではなく、静寂だが時が止まるような感覚のウッスウッスをするのが先輩Bの常だった。

 

私とその先輩Bが今日フロアですれ違ったときには颯爽と早歩きで去っていった。音を置き去りにするというのも決して比喩ではない。

そこにあのウッスウッスは存在しなかった。

表情も何か引き締まった決意らしきものを感じる。部署後輩でもできたのだろうか?

いや、というよりこのフロア全体を陰鬱と充満する見えない何かを跳ね除けるような覚悟の鎧を纏ったようにもみえた。先輩Bは明らかに以前に増して強くなった。

ゴゴゴゴゴゴゴオォ。

もう私の知ってるあの先輩ではない...。

彼女は会社という言語ゲームに堂々参戦し、勝つ為に、勝利ポイントを淡々と集め始めた。生き残る為に。

いつになったらこの言語ゲームに正々参加できるのか?妻の中の人には大変申し訳ないが、私はまだそれすらままならない。