チェーン・山本

-----こんにちは。 山本 あっ、もしもし、山本です。 -----あの、すみません。ちょっと不具合があるようでして。 山本 不具合...?というと、具体的にどのような内容になりますか? -----そちら様が納めていただいた製品についての不具合です。 山本 すみま…

散乱

これが山本家の日常の惨状、惨劇なのだが、これを楽園と捉えることもあり得るかもしれないと、ちょっと冒険的なことを言ってみたくなるものだ。 その心は、人は整理されてるものも好きだけど、散らかってるものも、同じくらい好きではないかと。 散らかって…

荒み

家が荒(すさ)み、生活が荒み、仕事が荒み、気分が荒み。色々と荒れ果てると一層のこと、どうでもよくなるものだ。 昨日は、私が体調不良で会社を休んだのだった。色々と納期や不具合回収に追われている一週間でもありまったく余裕もなく、わざわざ休んでくれ…

こんな時間にFAXですか?

ご相談者さん。貴方、塩漬けにされて冷凍されたい欲求があるんだそうで。 はい。FAXで送ったとおりなんですが、久しぶりにFAX使ってみましたが、あれはいいもんですね。ははは。 塩漬け、これは比喩ですか? はい。塩漬けはラーメン山岡家を意味しており、冷…

気づいたら、大人を語ってしまう

今日は娘の保育園の秋祭りに参戦した。本当に楽しい。娘はなぜか緊張している風だったけど、緊張するということにも慣れていない様子で慣れていないことにも、慣れていない様子で。 生まれた間もないうちは、慣れている様子というのが、ない。得意な雰囲気を…

憂鬱な朝

四肢がだらんとする。娘の声が遠くから聞こえる。責任と信用という堅物を感じずにいられない。今日も何回いつもお世話にならなければならないのかと思うとゾッとするし、事あるごとに説明を行わなければならないし、常時質問も受け付けたくないが受け付けて…

Everything is forgiven on saturday

何とモーセの十戒....あれ、そうだ。なんだっけ、そう、朝に所ジョージを食べたんですね、あのツルんとした喉越しと透明と冷涼と夏の感触にからだ中が堤慎一。 ごめんなさいね。私ちょっと最近ことば出てこなくて、いつも朝礼も会議中もこんな感じで、半年前…

ロボット掃除機と近所を散歩をする

清々しい朝の散歩は、わたしの愛犬と共にあった。あさの弱々しい陽光がコンクリートの表面を薄く舐めるように、私たちもダラダラとジグザグとクネクネと歩くのだった。 ラジオ体操終わりの早起きご老婦人方とすれ違いながら、なおも奇妙なその歩を進めた。彼…

なれませんでした

29歳Kはやる気で満ち溢れていた。既にサンダルを脱ぎすて裸足になった。 天気は良好。岐阜の高地。強い日差しはあるものの涼しげな風が素足の上を通過する。赤色の塗装でポップな感じのコンクリート地面。2.3mおきに水が地面から垂直に、空に向かって噴き上…

29歳、夏の夜のサーティーワン

夜のサーティーワンに事件なぞあるわけもなく。汗でぴっちゃり背中とTシャツが引っ付いている中国人、歯切れの悪い日本語でナッツトゥーユーとオーダー、kpopを意識した異様に色白脚長の女子高生が丸テーブルを囲いながら、各々の端正な顔はスマホに照らされ…

A

レゴブロックやM6のレンチ穴が空いたボルトが床に転がっている状態について、鼻をかんだティシュがワックスの剥がれたフローリングにへばりついている状態について、金魚の丸っこいラムネみたいな餌が地面に咲き乱れる状態について。 その状態について、なに…

M

----貴女は、何故読まずに語るのでしょうか?何故、ここまでにして読まないことに拘るのか?読むことは、知ることは穢れでしょうか? 妻 読むことは、とても大変で到底わたしには無理ですね。それをやらなければならない状況に追い込まれればしますが、…

O

Quick pay!!! ずるずるとレシートがレジから吐き出されてそれらが溜まりに溜まった受けにぼとん落下した。 無限なるオアシス。この悪魔はわたしに買物する機会をあたえる天賦の才を持ち合わせている。その名はQuick Pay。なんだかよく分からんが端末をレ…

T

妻のパジャマが綺麗に切取られていた。私は良い布だ!と思って何かに使った記憶があるのだが、何に相当する部分を忘れた。一応、謝った。彼女はそこまで怒っている様子はなかった。何年いても妻のことが分からない。

O

本当に。わたし以外のこの世のあらゆるもの、万物が大人という生き物で構成されていると思うのは錯覚をとうに越して実感のレベルに達している。ひとと話すということ一つとっても、あんなに楽しい事であるに関わらず、他者に対してここまでかと思わせる程に…

土曜

蛇口を捻って水を飲む。水を飲んだらこの後黙って後にするこの給湯室。自席、ノートパソコン、ディスプレイ、上司の承認を貰っていない帳票類。紙屑にペットボトル、わたしの身体がそれらの元に戻るのはもう時間の問題でしかない。このほの暗い空間でわたし…

渋滞にハマるのは朝の日常で、今日もそうだった。信号待ちに。暇だから目を閉じて5秒間でもゆっくり数える。1、2、サン。なぜかカウントアップで山頂のファイブに辿り着くや、懐かしい自転車を漕ぐ角張った肩に、黒縁の男が現れる。この男は同じTシャツを無…

妻の誕生日

明日は妻の誕生日なのだけど、何の準備もしていない。何の準備もしていないのは所謂先延ばし癖というやつで、先延ばし癖があるのは、ギリギリまで粘れば途轍もなくいいアイデアが浮かぶのではないかという幻想に囚われているからで、そんな幻想にすがってい…

夏は素麺.com

素 麺 とかいて、soumenと読む。 そして、ここで私はあえて辞書は引かない。 素数は数の「素」(もと)であるし、素材は材の「素」であるし?、すくなくとも素麺は麺の素ではない。ラーメンは素麺から製造されないし、うどんも素麺をドロドロに溶かして製麺す…

ファミチキ

夕刻。保育園に車でお迎えに行く途中にふと腹が減ったなと思いファミマに寄った。ファミマに入る前から、だいたいファミチキを食べようと心に決めているのもそうで、まぁ例の如くファミチキをオーダーする訳であるが、わたしが注文したファミチキはファミチ…

おすすめ

購買で昼に買った塩キャラメルクラッカーがやたらうまい。 自分が食べて美味しいと感じたものに関して、人と共有したという欲求があるが、共有した相手に感想を強要するような感じもして(それがその相手の好みでなかった場合は尚更)、なんだか気が引けてしま…

手羽先

今日も手羽先を買ってしまった。 手羽先を初めて美味いと本当の本当に心の底から思ったのが昨日だった。その昨日から日数にして僅か1日経った今日も手羽先を5人前テイクアウトしたのは、昨日と今日のわたしが割りかし近い存在であることの確たる証拠でもある…

シフォンケーキ

日曜の朝、家族みんなでカフェにいった。 そのカフェは初めて行く店だった。私が豆を買い足したいといったら妻が一番いい意味で適当に店を選んでくれた。 その日の午後、私がシフォンケーキに血眼になっていたのは、紛れもなく午前中の珈琲屋の経験が影響し…

プロポーズ

土曜日ということもあって図書館にきた。こんなラフな格好できたことを恥じた。休みの日にいく図書館なんてラフでいいだろと真っ当な意見をいただけるのはありがたいのだが、今日に限ってはデラックスコースでクリーニングしたスーツで身を固めてもやり過ぎ…

2Lのツッコミ待ち

2Lペットボトル。 サントリーの天然水。 この透明な文鎮を毎朝会社に携えていくのがいつしか日課となった。これはこれは、身も蓋もないことを言うとこれはただのツッコミ待ち、言うところの儀式なのである。しかしその期待値のわりに水は重すぎるのは言うま…

お前、仕事しろ

なにも身体から力が出ないというときがある。鯉のぼりのようにただ春風に揺られていたいと思ったが、あれは屈強な筋肉系YouTuber達の黒帯のようなもので少なくともpc前でくたばっているこの自堕落の極まった現在の私が、やることではない。てか出来ない。 私…

氷を作る人

冷凍庫に溢れんばかりの氷がわんさかあるのをみると、明らかにわたしではない「他の存在」を感じる。そう、他者の存在。それは言うまでもなく妻なのだけど、わたしなんぞは「おっ!氷が無くなったな?」と思ったところで、製氷機に水を入れるという善行を生…

大人になれない拡張現実

落ちてきた玉ねぎが足の甲に直撃した。骨ばった足にぶつかった玉ねぎは蹴鞠のようにポンと跳ねることもなく、鈍い音だけを残して机の下を気持ちよく転がっていく。 玉ねぎはこんなにも壮観に転がるのか、ならばインドのタージマハルもよく転がり螺旋を廻るか…

妻という条件

肺炎療養2日目。 雨だ。 そこら一帯の道ばたを足早に歩くおじさんは、恐らくこの街の優良企業に勤め人であるのはほぼ間違いなく、決して平坦ではない修羅を幾度となく潜り抜けた猛者であろうし強靭な精神と肉体を備えた存在。 彼らの作った世界を享受して我…

懺悔:娘の保育園の連絡帳について

なんてわたしはダメな大人であろうか? この凡庸すぎる想像力.... 私は毎日、この娘の日常を綴った連絡帳を心の栄養源にして生きているのだけど、これほどまでに何か別のイマジネーションを歓喜してしまうっくそぉおおおおお俺はクソだと思いつつ、純真さと…